大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(ネ)2346号 判決

被控訴人は、控訴人は昭和三〇年三月一三日以降本件建物部分の悪意の占有者としてその使用利益を償還すべき義務があると主張するので、この点について検討する。売買の目的物の果実を売主と買主のうちいずれが取得するかにつき、民法五七五条一項には、いまだ引渡さない売買の目的物について生じた果実は売主に属する旨規定され、右条項は同条二項と相まつて売主と買主との間に目的物の使用の対価及びその管理、保存の費用並びに代金の利息等につき複雑な権利関係の生ずることを防止し、かつ右両者間の公平をはかる趣旨のため特に設けられたものとみられるから、売買における目的物の果実取得の問題は右法条に従い画一的に解決せられるべく、占有に関する規定によつて解決せられるべきものではないと解するのが相当であり、従つて代金の完済と同時に引渡すべき売買の目的物を占有している売主は、その代金の完済を受けるまでは売買の目的物より生ずる果実を取得し、或いはこれを使用し得るものというべきである。ところで本件建物の被控訴人に対する所有権移転登記が昭和三〇年三月二日なされたことは当事者間に争がなく、控訴人は右登記後一〇日以内に右建物を明渡すべきものであることは前記認定のとおりであるが、しかし控訴人の右明渡しは被控訴人から前記売買残代金一九、四〇四円の支払を受けると同時になされるべきものであることは被控訴人の自認するところであるのに、被控訴人において右残代金を支払つたことについての何らの立証がないから、控訴人は右残代金の支払を受けるまでは本件建物部分を明渡す義務なくこれを使用し得るものというべきである。従つて控訴人は本件建物部分の悪意の占有者としてその使用利益の償還義務があるとの被控訴人の主張及び右償還請求債権の存在を前提とし、これと控訴人の被控訴人に対する前記売買残代金債権とを相殺したから、控訴人は本件建物部分の明渡しを即時なすべき義務があるとの被控訴人の当審における主張はいずれも理由がない。

(二宮 奥野 大沢)

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